2005年2月1日
*世界の食卓から(第36回):塩2

・岩塩鉱
 オーストリアに行った時にハルシュタット(Hallstatt)という街を訪れた。ドイツ語でHallは「塩の出る所」を意味し、その名の通り岩塩鉱がある。ここでは岩塩鉱の中に入って見ることができる。防寒具を着て中に入るのだが、ガイドの訛りの強い英語に驚いた。実際にトロッコに乗り、最後は中から外へ出てくる。中には滑り台もあった気がする。塩を運ぶ時に使ったものだったのだろうか。
中世ドイツでは塩は大変貴重品で、それでザルツブルク(「塩の砦」の意味)の財政が潤っていたほどなのだそうだ。

・貴重な塩
 そう。ヨーロッパには海のない国もいくつかある。塩は貴重品だったのだ。従って、彼らは塩を使い慣れていないのだと思う。保存食は、酢漬けや、酒漬け、砂糖漬けなど。腐っている場合は、胡椒などで匂いをごまかす。貴重な塩をむやみには使わない。
 その反面、日本はどうか。海に囲まれ、塩に困ったことなどない。海から水を引いてきて、水分を飛ばせば塩の出来上がり。海の水はなくなることはない。だから、保存食は塩漬け。野菜も魚も塩まみれ。これが日本人が塩分取りすぎの人種になってしまったわけでもあるのだ。

・慣れない「塩」
 上に書いたようにヨーロッパ人は塩を使い慣れていない。よって、塩の味加減がわかりにくい。しょっぱいか、塩味がないか、両極端だ。ヨーロッパの国はまだ理解できる。しかし、日本と同じ島国イギリス。(いや、ここもヨーロッパなんだけど)。ここがどうして塩を上手く使えないのか理解できない。イギリス人御自慢の「フィシュ&チップス」はたいていどこでも塩辛い。油っこくて、塩辛い、そしてそれに酢をかけるので舌を休めることができない。

・ヨークシャープディング
 一方もうひとつのイギリス人の御自慢「ヨークシャープディング」。
 これはイギリス人の友人にイギリスに旅行に行く、と言ったら「絶対にヨークシャープディングを食べて!世界で一番おいしいものなんだから。日曜日のお昼にはどこでも食べられるから。」と言われていたもので、私はたいそう期待していたのである。ロンドンに行った時、たまたま日曜日だった為、パブらしきものに入り、ウキウキしながら注文した。出てきたものは・・・。味のない、パンとパイの間のようなものだった。ローストビーフの付け合わせとして食べるのが普通だ。なんでも、昔、貧しかった時代、さきにそれを食べてお腹を膨らませてからお肉を食べたそうだ。材料は小麦粉、卵、牛乳。これに世界一おいしいカスタードクリームを乗せるとおいしいお菓子になり得るかもしれないが、間違えても世界一おいしいものではなかった。友人は「あれを日本で食べられないのがとても悲しい。どうして日本では作らないのか」と言っていたが、作らない理由がとてもよくわかったのだった。
 話が脱線してしまった・・・。

・島国日本
 日本にはいろいろなものがある。常夏の島もあり、流氷が見られる場所もあり、大雪のところもある。魚も取れるし、肉もまあ、少ないけれどある。地震もある、台風も来る、海がある、山がある。世界には、海を見たことのない人がたくさんいるし、雪を見たことのない人もたくさんいる。日本にはなんとたくさんのものがあるのだろう。そして、その自然からのたくさんの恵み。塩もそうだ。感謝して使いたい。

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財団法人 塩事業センターの「塩のおはなし」より  

 左側から岩塩、天日塩、精製塩。
 海外の塩田で作られた原塩を溶かして、再加工して作っているのがキッチンソルトやクッキングソルトだ。