2004年8月21日
*世界の食卓から(第21回):優しく包む

・粉薬の飲み方
 前回も登場したイギリス人の友人が、風邪で病院に行った時、薬を処方された。その薬が粉薬だったことに大変驚いていた。「日本人はあんなのどうやって飲むの?!」と言うので、「袋を開けて喉の奥に流し込み、その後に水を飲む」というと「まずいのに!どうしてタブレットか錠剤ではないのか?イギリスでは粉薬なんて売ってない。飲みにくいし。」という。確かにタブレットや錠剤の方が飲みやすいのに、なぜ粉薬があるのか?「胃で溶けやすく、早く効くからじゃない?」というと「タブレットだってすぐに溶ける」とのこと。「あんなにまずいものは飲めない!」と言っていた。そこで「オブラートに包めばいいんじゃない?」と提案すると「何それ?」との返事。あれ?オブラートってカタカナだし、外国から来たんじゃないの??
 
・そこで、オブラートについて調べてみた

 「オブラート」はラテン語の「オブラトゥス(oblatus)から来ているそうで「楕円形」という意味です。オブラートがどの国で初めに作られたかは定かではありませんが、ドイツのキリスト教のミサでウェハースに似た丸い小型のせんべいのような物が祭壇に備えられ、いつしか、この「硬質オブラート」が薬を服用するのに使われたそうです。
なぜか、いまだに懐かしいような入れ物に入っている。 日本には明治初期に輸入されたと言われていますが、この頃は「硬質オブラート」が主流でした。ところが、三重県に住む医師が、正月料理を作っていた時に、たまたまこぼした寒天が薄い紙片状に広がり、固まるのを見て、現在の薄いオブラートを発明しました。戦後しばらくの間は、飴やキャラメルを包むのに使われていました。飴は水あめを原料としており、べたつき感があり扱いが難しかったのですが、オブラートに包むことにより扱いやすくなりました。現在は包装技術の進歩により紙で包めるようになり、オブラートの需要は減ってきています。
 しかし、薬用のオブラートは根強い人気があり、需要が減ってはいますが、今なお多くの人が愛用しています。

・なるほど
 もともと輸入品だったのを、日本人が日本特有の物に作りかえたらしい。日本人の「薄く、小さく」する志。こんなところにも現れていたんですね。

・環境保護に一役買う?
 ごみ減量が叫ばれる近年。飴の個包装をオブラートにすれば、包装ごと食べられてゴミが削減できる。ドイツ辺りで、ゴミ削減を訴え、オブラートを使用したキャンディーを売り出せば、売れるかもしれない。

 ボンタンアメを食べる時、外のくしゃくしゃしたオブラートごと食べられるのがなんとなく嬉しく、優しい感じを受けるのはわたしだけだろうか。