2004年8月11日
*世界の食卓から(第20回):食べる番組

・こんなところにも食文化
 イギリス人の友人からはいろんな質問を受け、お互いの文化の違いによく驚いたものだったが、その彼女からの質問に「なぜ日本のテレビでは食べる番組ばかりやっているのか?」というものがあった。それまでさほど気にしていなかったが、気にしてみると、確かに多い。19時半ごろから21時までは特に多い。たまに、どのチャンネルを見ても食べている、なんてこともある。「料理番組」ではなく「食べる番組」というところにポイントがある。

・「食べる」がメイン?「料理」がメイン?「喋る」がメイン?
 では、外国はどうか?旅行に行った、という程度では、まず、食べ物の番組をみることはない。少なくとも、私はなかった。もちろん、住んでいたカナダではある。が、それは「料理番組」であり、「食べる番組」ではなかった。
フードチャンネルより。
この右上の白いロゴがフードチャンネルのマーク。 ケーブルテレビの「FOODチャンネル」では、ずーっと食べ物について放送していたが、実際に食べているところを見た記憶はそんなにない。クッキング番組では作るのがメインの番組なのか、喋るのがメインなのかわからないものもよくあった。
 ちなみに台湾では日本の番組が多く放送されており、「食べる番組」も台湾で放送されていることがあるらしい。だが、台湾が製作した番組のほとんどは「料理番組」だそうだ。

・なぜ、食べる番組?
 日本では、やたら食べるシーンが多い。作っている所を放送しないで、食べているだけの番組や、レポーターがいろんな所に行って食べる番組、最近でこそないが、少し前までは、「大食い選手権」なんてしょっちゅうやっていた。旅の番組でも温泉めぐりなんてすると、お風呂のシーンよりも長いんじゃないかと思うくらい、食べるシーンがある。
 どうしてそんなに食べる番組が多いのか?食べることというのは誰もが好きなことで、日本人だけが特に執着心が強いわけではない。初め、「食べ物を軽視している表れか?」と思ったが、これは、それだけ料理の種類が多く、見ただけで食べたくなるような物がたくさんあるのだということではないかと思う。

・来るもの拒まず。
 日本人は何でも種類が多い。なんでも受け入れて、種類が多くなる。世界中で3種類もの文字を使うのは日本人だけだし(普通、漢字からひらがなを作り、「ひらがな」をその国独自の文字として使う場合、漢字は使わなくなるはず)、言葉でも英語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語、オランダ語等、ごちゃまぜに使っている。これは日本が島国で、他の国に侵略されにくかったためだと思われる。陸続きに他の国がある場合、何でも受け入れていては、その国に侵略されてしまう。しかし、島国日本では食材、調味料もありとあらゆるものを受け入れ、他国の料理を日本人好みに変化させている。
 「多国籍料理」ではなく「無国籍料理」を作ってしまうし、「和洋折衷」なんてのもある。「無国籍料理」や、「和洋折衷」「洋食」は日本にしかない、「日本食」なのだ。

・口は閉じて食べましょう。
 食べ物を食べる姿は、あまり美しいものではない。どこかの国では食べる姿を見せることは恥ずかしいことで、食べる時は口元を隠しながら食べると聞いた事がある。「食べる番組」の出演者の方にはぜひ「美しく食べる」ように心がけて頂きたい。
 「食べるだけの番組」ではなく「食べ方の番組」も兼ねてくれるような番組もあってもいいのではないだろうか。