2004年5月21日
* 世界の食卓から(第12回):自分の常識は世界の常識ではない

 外国では、日本のものの「ふり」をして売られているものがある。それは類似品などというわざと真似して売っているものではなく、多分、現地の方はそれが普通と思って売っているし、買っているのだ。それは・・・。

・豆腐の種類は絹こし、木綿、ソフト木綿?
 ある日、私は初めてカナダのスーパーで豆腐を見つけた。おおお。久しぶり!味噌汁に入れよう!と思い、買って帰った。いざ、切ろうと思い、パックを開けて手のひらにひっくり返すと、ぼろぼろぼろ。バラバラになって、流しに落ちてしまった。
 なぜ?腐ってたの?と思い、匂ってみたが、腐っている匂いはしない。そこで、食べてみた。甘い・・・。なんだこりゃ?!である。慌ててパッケージを見ると「デザート豆腐」。まさに豆腐に砂糖が入っている味がした。1種類しかなかったので、賞味期限だけを見て購入してしまった。不覚。翌日再びスーパーで確認してみると、豆腐が3種類に増えていた。なぜ3種類?絹こし豆腐と木綿豆腐とデザート豆腐?とよく見ると、豆腐とデザート豆腐と、アーモンド豆腐だった・・・。なんだこりゃ?怖いもの見たさで購入。食べてみると、そのまんまの味。杏仁豆腐でもない、アーモンド豆腐だった・・・。
 ちなみにヨーロッパでは、一般のスーパーに豆腐は売っていません。アジア食材屋さんに行かなくてはならないようで、ロングライフ牛乳のような容器に入った真空パックの豆腐や、自分で作る粉末タイプの物があるそうです。粉末タイプは、水に溶いて火にかけ、凝固剤(多分、にがり)を入れて冷ますというもので、おいしくないそうです。

・分厚い「揚げ」は「厚揚げ」?
 ある日、私はカナダのスーパーで大根を見つけた。おおお。ちょっとしなびているが、大根だ。切干大根は乾燥した大根だし、しなびていても大丈夫。煮物にしよう。でも、大根だけじゃあ物足りない。厚揚げがほしいな、と思い売り場を探すとなんと、厚揚げが!嬉しくて早速買って帰り、厚揚げのパックを開けた。ん?軽い。切ってみるとなんと、厚揚げのふりをした薄揚げだった。見た目は厚揚げなのに、薄揚げのように中身はすかすか。口の中で厚揚げの味を想像していただけに、ショックを隠せなかった。

・太巻きの中の緑色は何?
 太巻きの中の緑色、これを見たとたん、ほとんどの人は「胡瓜」もしくは「三つ葉」と思ったはず。
 私は友達とご飯を食べに行って、太巻きを注文した(カナダで)。「太巻き」という名称ではなく、「カリフォルニアロール」という名前だったが、まあ、見た目は太巻きなので、何の疑いもなく注文した。写真では、エビだか、カニだかわからない大きな赤いものが入っていたので、「カリフォルニア」という名前がついているだけだと思っていた。
 しばらくすると、来た来た。久々の太巻き!おお。大きい赤い何かが入ってる。多分、エビだろうな。こっちのエビは姿は素晴らしいが、味は薄い。胡瓜もでかいだけで、味は薄い。でも、そんなことはどうでもいい。太巻きだ!いっただっきまーす。「ふにゃ」。え?あの、胡瓜の「ぽりっ」とした感じはどこへ?そう。胡瓜だと思っていたものは、なんと「アボガド」だった・・・。味はまあ、マヨネーズみないなもので、エビマヨ巻きみたいな感じだったので、おいしかったのだが、胡瓜も入れてほしかった・・・。
 全く別の日に、ベネズエラから来ていた友人に「寿司って昔からあるものみたいなのに、アボガド使ってるのね。」と言われ、「日本ではアボガドは巻かないよ。」と言うと、大変驚いていた。ベネズエラの日本食屋さんでも太巻きにはアボガドが巻いてあるらしく、日本でも巻いてあると思っていたようだ。
 アメリカ、カナダに行かれた際には是非「カリフォルニアロール」お試し下さい。結構、おいしいです。

・常識は人それぞれ
 日本で日本風の中華料理、日本風のイタリア料理が作られているように、その国ではその国の人の口に合った物が売り出される。デザート豆腐も厚揚げ風薄揚げも、カリフォルニアロールもその国の人の口にあわせて作られたものなのだろう。日本にもその国の人が食べると「なんだこりゃ?」というものがあるに違いない。
 ちなみに、イギリス人の友達は、アールグレイにミルクを入れるなんて考えられない。日本でいえば、ウーロン茶にミルクを入れるようなものだ!と言っておりました。